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リクエスト内容:〇〇しないと出れない部屋、でクロスオーバーではなく本来のアーサーペアで見たいです。



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いつの間に目を閉じていたのか。
いや、開けていたのかもしれないが、唐突に意識が戻ったような感覚。
驚いて目をしばたたかせれば、そこは真っ白な部屋。

「…え」

どこかで見た事があるような、ないような。
朧げな記憶に頭を降りつつ、アーサーはざっと辺りを見回す。
置かれたソファに横になるその人を認めて、目を見開くと慌てて名を呼んだ。

「っ、マスター!!」

駆け寄って様子を見るが、眠っているだけらしく、小さく胸が上下している。
アーサーの声に少し眉をしかめて、が唸った。

「んん?んー…、あと、五、分…」

光から逃れるように身を縮めて言うに、アーサーは困ったようにもう一度声を掛ける。

「マスター」
「うぅ、な、に??………っ、えっ!?」

薄っすらと開いた目がアーサーを捉え、ぼんやりと周囲を見てから飛び起きた。
きょろきょろとした後、アーサーに視線を戻す。

「…どこ、ここ」
「僕にもわからない。でも、何か…以前も似たような…。いや、はっきりとは思い出せないんだけれど。確か……」

テーブルの上に視線をやれば、思った通り、紙が裏返しで置いてある。
それを手に取り、ぺらりと捲るとそこには短い文章があった。

[手を繋いで踊ってください]

「……うん?」

怪訝な様子のアーサーの後ろから、もその紙へと視線を落とした。

「…はい?」
「なんだかよくわからないね」
「これをさせて、元凶に何のメリットがあるのかしら…」

不思議そうに言うと首を傾げ合ったアーサーは、ふと思い至った事を口にする。

「愉快犯、と言うやつだろうか」
「こんな事して楽しめるのは……思い当たらなくもないけど…。とりあえず、手分けして他に何かないか探そうか」

の提案に頷いて立ち上がったものの、特に何かあるわけでもなく、室内にはソファとテーブルがあるのみ。
真っ白な壁を調べてみるが、やはり何もなかった。

「何もない…か」
「うん。ここを出るのはあの紙の指令が鍵…なんだろうね」
「踊れ、ねぇ…」

腑に落ちない顔でが呟けば、アーサーが少し首を傾げて手を差し出した。

「マスター、お手をどうぞ」
「! え、あ、そ……」

乗せられた手を握って、そっと腰を支えると、驚いたがしばらくした後、片手で顔を押さえてしまう。

「?」
「いや、ごめん、そうよね、普通はそう考えるわね…」

いわゆる社交ダンスとでも言うべきか、向かい合わせの近い距離には思わず溜め息を吐く。

「マイムマイム的なものを想像してたわ…」
「ま、い?ん???」
「うん、忘れて…」

聞き返してくるアーサーに首を緩く振って、誤魔化したはふと気付く。

「…と言うか、こういうダンスも踊った事ないわ」
「僕も慣れているわけではないけれど」
「あら、そうなの?女性は男性のリード有りきと聞くし、腕の見せ所ね?アーサー」

目を丸くした後、悪戯っぽく言うに咳払いをして、アーサーは改めて背筋を伸ばした。

「では、準備はいいですか?レディ」
「っ、えぇ」

虚をつかれたが慌てて答えると同時に、アーサーは緩やかに一歩を踏み出した。




「で、これはいつ終わるのかしら」

ようやく足運びにも慣れた頃合いで、は言う。

「そうだね」

何度かつまづきそうになったをフォローしながら踊り続け、それなりの時間は経っているはずだ。

「…終わるのはなんだか勿体無い気もするけれど」
「ん?」

思わず呟けば、聞こえなかったらしいが見上げてくる。
ただただ不思議そうな顔をしているに、なんでもないと首を横に振りかけるが、ふと視界がぶれた。



弧を描く口元。
唐突にフラッシュバックするその映像。

『――時には手を引く強引さも必要だとは思うけど』

悪戯っぽく言う、聞き慣れぬ声が脳裏に響く。



それに背を押されるように、一つ息を呑んでアーサーは口を開く。

「…
「っ、え?」

名を呼べば目をしばたたかせるに、唐突すぎたかと少し不安げな顔でアーサーは首を傾げた。

「えぇと…嫌だったかい?」
「あ、え、ううん…驚いただけだよ。そう言うポリシーかと思ってたから」
「え?」

きょとんとしたまま答えると同じ表情になったアーサーは、思わず足を止める。

「おっと。…アーサーは最初から私をマスターと呼んでくれたから、そう言うものなんだと思ってたの」

つられて動きを止めたは小さく笑う。

「名前を呼ばれるのはなんだか新鮮ね」

覚悟を決めて口にしたそれは、にとって意外ではあっても嫌悪にはならなかったらしく、楽しそうに破顔する。

「逆に私は、セイバーって呼んでみようか」
「えっ」
「ん?」

どこかうきうきと言うと、アーサーが戸惑ったような反応になった。
あれ?と思いながら見返せば、どこかしょんぼりとしている気がする。

「本来の聖杯戦争であるなら真名は秘匿すべき事項だから、クラス名で呼ぶのが普通だけど、私は呼んだ事ないなと思って」
「いや、うん、そう…だね」
「…あ、嫌だった?」

理由を伝えたものの歯切れの悪いアーサーに少し慌てると、アーサーも慌てたように首を振る。

「あ、いや、少し…その、自分の事なのに自分ではないような…そんな気になっただけだよ」

そこまで言って、ふと気付く。

「…は、マスターと呼ばれるのは」
「私はどちらでも嬉しいわ。呼んでもらえるのは、それぞれ個人として、魔術師として、認めてもらえたって事だと感じるから。それに――ん?」

何か言いかけたの目が少し細まり、ぐらりと揺らぐ体を支えようとしたアーサーの視界も歪んだ。


「なっ……え?」

頭を振った反動で体を起こせば、そこは薄闇に包まれたカルデアの自室。
深く息を吐いて、思わずどさりとベッドに背を戻す。
片腕で目元を覆い、気持ちを落ち着けるように呼吸を繰り返す。

(…あちらも戻れているだろうか)

ふと不安がよぎるが、あの部屋に悪意はなかった事を考えるときっと無事なはずだ。
繋がったパスに乱れもない。
もしかしたら、自分の夢だっただけかもしれない。

ちらりと横目で時間を確認すれば、まだ朝とは呼べない時間で、さすがにこんな時間に女性の部屋を訪れるのは、とはやる気持ちを押さえて、アーサーは朝が来るのを待った。






「…………マスター」

一瞬、どう呼ぶべきか躊躇って、結局いつも通りに声を掛ける自分に内心で溜め息をつきそうになりながら、医務室のドアをくぐる。
入って来たアーサーにが顔を上げた。

「あら、おはよう、セイバー」
「!?」

その呼び名に目を見開いて固まれば、が吹き出す。

「ごめん。おはよう、アーサー」
「お、はよう。えぇと…その…」
「明瞭に覚えてるわけじゃないけど、まあ不思議な体験だったわね?」

くすくすと笑うに困ったような顔でアーサーも頷く。

「あの時、踊りをやめていなかったら、まだあちらに居たのかしら」
「条件として、踊り終わる事がトリガーだったのかもしれないね」

いっこうに変わらなかった状況が、足を止めたところで進展した事を思うとやはりそうだったのだろう。

「マス…あ、…」
「?」

言葉に詰まったアーサーの葛藤に少しの間の後、気付いたは、ふっと微笑った。

「アーサーの呼びやすいように呼べばいいよ」

軽い様子でが言う。
関係が崩れる事を恐れて、変に意識し構えてしまっていたのは自分の方かとアーサーは肩の力を抜いた。
は変わらずちゃんと向き合ってくれているのだ。

(思っているのとは、少し違うけれど…)

あくまで、マスターとサーヴァントの関係。
けれど、それは何より近く、強く繋がっている事は間違いないのだ、とアーサーも笑みを浮かべる。

「では、これからもよろしく、
「えぇ、こちらこそよろしく、アーサー」

柔らかく目を細めたが穏やかな声で応えた。





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リクエストありがとうございました!
ずっと書こう書こうと思いつつ、着手出来なかったので良い機会をいただけました。
と言いつつ、進展したようで言う程しませんでしたね…。
のらりくらりしてるわけじゃないけど、擦り抜けて行く感じは続きそうです(苦笑