を抱えたまま談話室に入ると、コーヒー片手に、貰ったお菓子を広げているジャック達を見ていたダ・ヴィンチが気付いて笑みを浮かべる。
「おや、珍しいお客さんだ」
「え?あ、王様だ…って、え…ん?え…まさか」
「本人よ、言っとくけど」
なんとなく言いたい事を察して立香の言葉を遮れば、ですよね、と頷かれる。
「えぇ!?
さん!?」
ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィが驚いてあげた声で、入って来た二人に気付いたジャックとナーサリーも顔を上げた。
その前に、ぽいっと
を下ろしたギルガメッシュはその場を離れる。
「わぁ、ちっさーい」
「あらあらまあまあ、まるでアリスね!」
「…なんだか皆と視線がそう変わらないのは新鮮ね」
きゃいきゃいとジャック達に囲まれた
を見ていた立香は、ポンッと手を打った。
「…そのサイズなら皆と回れる」
「え、あんまりこの姿を広めたくないのだけど」
いくら小さくなっているとは言え、中身はそのままなのだ。
お菓子を貰い歩くのはなかなかにハードルが高い。
立香の提案に渋い顔をした
は、小さく息を吐いた。
「いいのかい?」
「ふん、幼少期の思い出なぞ、あれにはそうないだろう、今の内だ」
微笑ましげに眺めながら、念の為、と言うように聞いてくるダ・ヴィンチに、ギルガメッシュは目を細める。
「
自身は少し苦手そうだけどねぇ」
くすくすと笑ったダ・ヴィンチは、肩をすくめた。
「あ…ね、ねぇ、
さん、それでさっきの変化…つけれたりは…」
「さっきのって…これ?」
立香の言葉に首を傾げながら魔力を巡らせれば、ぴょこりと獣耳が現れる。
「っっっグッジョブ!!写真!写真撮らなきゃ!!」
満面の笑みで親指を立てた立香に、
は残念なものを見る顔になる。
たまたま通りかかったサーヴァントの何人かは、立香の声に何事かと視線をやって、
を二度見した後、立香と同じような反応であったり、顔を真っ赤にしてそそくさと去って行く者までいる。
そんな中、とある男の叫びが部屋に響いた。
「ほぁぁぁぁ!!??今年は幼女に獣耳ですとな!?まさか、
嬢がこのようなハロウィンコスプレをぶち込んでくるとはここは天国?大人バージョンも見たい我輩…ですが、それは命がない…うううん悩ましい!」
すでに危険水域である気はするが、いい笑顔になっている黒髭に、
は顔を引きつらせる。
何というか、ダメな方の性癖に色々刺さる容姿らしいと言う事を理解して、
は立香達から離れようとした。
「…おい、雑種」
「っはい、なんでしょう王様!」
慌てて姿勢を正した立香に、
を見たままのギルガメッシュが口を開く。
「写真を我にも回せ。ただし他には配るなよ」
「は?ちょ、何言ってるの?」
愕然として、ギルガメッシュを見上げるが意に介した風もなく、それに対して立香も許可が出たとばかりに腕まくりをする。
「気に入ったんですね、了解です、喜んで!さぁ、
さん撮影会です!」
「ほ?撮影会ですとな?でしたら、この黒髭、アシスタントとして磨かれたこの手腕を――」
「やめて!!!」
ふんす、と鼻息荒く猛然と準備し始めた立香に同調した黒髭が胸を張り、
の悲鳴があがった。
「なんだい?えらく騒がしいねぇ、酒盛りでも始まったかい?」
顔を覗かせたドレイクに気付いた
は、脱兎の如く走り寄る。
「ドレイクさん助けて!」
「おっと、んん?なんだい、
かい?またえらく可愛い格好になってるね」
腰に飛びついてきた
を受け止めたドレイクは、まじまじと見つめて言った。
「不可抗力です!」
「そうなのかい?似合ってるけどねぇ…まあ、どっかの馬鹿の性癖に刺さりそうな――」
言いながら室内を見回したドレイクは、いそいそといい笑顔で撮影の準備をしている黒髭を見つけて笑みを凍らせた。
そして、
を軽々と抱き上げると肩に座らせる。
「わっ!」
「よぉし、理解した、そこに直りな、このクズ野郎!!」
「げぇっ!?BBA!!??」
素早く構えられた銃から容赦ない発砲音が響き、黒髭の顔が真っ青に染まった。
「
さーん…」
前でひらりと手を振られるが、ふいっと顔をそらして、ソファに座るドレイクのそばから離れようとしない
に、立香はがくりと肩を落とす。
「せ、先輩…」
落ち込む立香に、騒ぎを聞きつけてやってきたマシュが困ったように背中を撫でる。
目の前にいる
はすでに獣耳は消えてはいるが、まだ体は小さいままだ。
ギルガメッシュすらそばに寄せ付けない雰囲気に、
がかなりご立腹なのは見て取れる。
「一時のテンションに流されて、信用を失った…という事でしょうか」
「ぐっ…言うようになったね…マシュ」
胸を押さえて項垂れる立香に、今度はマシュが慌てたように、すみません!と謝る。
「いやーでも、うん…これは…」
しみじみと頷いている藤丸を威嚇するように、ぎっと睨んで、
はドレイクの服を握った。
「こらこら、皺になるじゃないか、そんなに警戒しなくても、マスターは何もしやしないさ」
「ご、ごめんなさい…」
慌てて手を離して謝る
の頭を撫でて、ドレイクは笑う。
「まあこの姿見て骨抜きにならない奴もどうかと思うけどね!」
ははは、と豪快に笑うドレイクに抗議の声をあげようとした
は、ふと口をつぐむ。
「!っ…」
少しドレイクから離れたかと思うと、ざわりと体を襲う異変に
は目をつぶった。
「おわっ!?」
藤丸の驚いたような声が聞こえるが、ざわざわと肌を這う気持ちの悪さは消えず、
はぎゅっと自分の体を抱え込む。
「っ…ふ…」
しばらくして目を開けた
は、恐る恐る自分の手を目の前に持って来て、見慣れたそれである事を確かめる。
きょろりと体のあちこちを見回し、元に戻っている事を確認すると、脱力してソファの背にもたれた。
「戻った…」
はぁ、と溜め息と共に呟けば、くすくすと笑われる。
楽しんでいる様子に少し困ったような顔をして、
はドレイクを見た。
「ドレイクさん、何かおつまみ作りましょうか、今日は豪勢に行きましょう」
「本当かい?いいねぇ、そうこなくっちゃ」
ぱっと顔を輝かせたドレイクに苦笑して、
は立ち上がる。
そして、変化に目を丸くしていた三人を見て、小さく息を吐いた。
「立香は当分おやつ抜き」
「えええええーーー!!!???」
じとりとした目で
が言えば、立香は絶望の声をあげる。
両隣のマシュと藤丸が、宥めるように立香の肩をポンポンと叩いた。
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