FGO



談話室の隅。
テーブルに上体を預けて、広がる髪もそのままにはぼんやりとしていた。
誰かが入ってくる気配に少し意識を戻せば、不思議そうな声音で名を呼ばれる。

「んん?か」
「…ロビン?」

よぉ、と手を上げるロビンフッドに顔を上げたは、ふっと息を吐く。

「なんだ?珍しいな、おたくがそんな顔してるなんて」
「そんな酷い顔してる?」
「ん、悩んでるってか…困ってる?」

どした?と首を傾げて聞いてくるロビンフッドにはゆっくりと口を開いた。

「弱く、なったなぁって…」
「は?」

きょとんとするロビンフッドを横目にはまたテーブルに体を預ける。
向かいの椅子を引いて座ったロビンフッドはどうやら話を聞いてくれるつもりらしい。

「まあ、昔よりは丸くなったとは思うが、弱くはないでしょうが。こないだもマスターに肉薄したエネミー吹き飛ばしたって聞きましたよ?俺は」
「…それ誰から聞いたの?」
「えーと、誰だったかな」

じとりと見てくるに視線を泳がして誤魔化したロビンフッドは、テーブルに肘をつくと首を傾げる。

「まあでも、おたくが表立って実戦に出るなんて、もう早々ないでしょうよ」
「それはそうかもしれないけど。何というか、そういう強さじゃなくて…」

言葉を切ったは、どう説明しようかと悩む。

「…私はね、マシュの“頼れる姉”でありたかったのよ。でも、きっと今はあの子の方が強い…。成長は喜ばしい事なんだけど、複雑だわ」
「十分頼ってると思いますがねぇ」

ロビンフッドは素直に思った事を言うがそうは思っていないらしいは、はぁ、と溜め息を吐いて目を伏せる。

「私は…弱くなる一方なのに」
「…ちなみになんでそう思うように?」

自分の目からは特に大きく目立って変わったようには見えないに、ロビンフッドは率直に聞いた。
その問いに、テーブルから体を起こしたは、今度は椅子に凭れかかる。

「気が緩んでるのが自分でもわかるのよ」
「張り詰めてばっかもどうかと思いますがね。おたくはちょっと頑張りすぎだ。今、緩急がつけれてるって事は、案外安定してるって事じゃ?」
「そう言うもの?いや、でも酔って泣くのは無しだわ…」
「は?」

の言葉にロビンフッドが目を丸くする。
何度か酒の席にいたのは知っているが、酔っている姿は記憶に全くない。
飲んでいるはずなのに、いつ見ても素面に近い様子で、少し離れた場所から見守るように過ごしているを思い返して、ロビンフッドは首をひねる。

「…そんな弱くなかったはずだろ」
「私もそう思ってたわよ。でも、起きたら頭は痛いし、目は腫れぼったいし、そのくせ記憶はほとんどないし…」
「…と言うか、あんたが泣くとか聞いた事ねぇですよ」
「だから、気が緩みすぎだって言ってるの…」

頭を抱えるようにして項垂れたは、うぅと唸る。

「…ギルは何も言わなかったけど…逆にそれが怖いわ」

何したのかしら私、と顔色を無くすに、ロビンフッドは苦笑した。
しかし、ふと思い至って微妙な表情を浮かべる。

「…それ、もしかせんでも、旦那の前だけじゃねぇですか?」
「え?………え??」
「だから、気が緩んでるのが」

呆れたように言うロビンフッドに、は何度も瞬きを繰り返してようやく意味を理解し、言葉を失う。
しばらく固まっていたは、酷く真剣な顔で口を開いた。

「…少し…離れてみた方がいいのかしら」
「っそれはやめとけ!いや、頼むからやめてください」

お願いします、と慌てたように言うロビンフッドに、目をしばたたかせたは首を傾げる。
その様子に、あぁもう、と頭をかいたロビンフッドは溜め息を吐いた。

「聞いてないのか?周回に駆り出された旦那がどんだけ気が立ってるか。お陰で火力が凄いけどな。距離なんかとったらカルデアがヤバい」
「はい?」
「あのな、そばにいないと落ち着かないのはあちらさんも一緒って事さ」

ロビンフッドの言葉には小さく息を呑む。
少し眉尻の下がった、困ったような、何とも言えない表情で黙ってしまったに、やれやれとロビンフッドは続けた。

「おたくが弱くなった――そんな風には思えんが…、まあ、弱くなったとしても、フォローしてくれる旦那がいるんだから問題ないって。しかもそれが本人の前だけなら尚更」
「…それって迷惑な事じゃないかしら」
「は?惚れた女に頼られて嫌な男がいるなら見てみたいっすわ」
「ほ…っ」

の頬が少し染まり、眉間に皺が寄せられる。
この辺は相変わらずなんだな、と内心微笑ましく思いながらロビンフッドは口角を上げた。

「なんか間違った事言いましたかね?」

ポンポンと頭を叩いて、にっと笑ったロビンフッドに、は唇を噛んで、ふいっと顔を背けた。




ロビンフッドも去り、また一人になった空間では溜め息をつく。

「…それ、もしかせんでも、旦那の前だけじゃねぇですか?」

リフレインするロビンフッドの言葉がじわじわと心を侵食し出す。
思い返せば思い返す程、自分の行動全てが居た堪れないものに思え出して、は思わず立ち上り、逃げるように談話室を出た。




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