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エレベーターを降り、受付を見やると視線でその人を案内される。
頷いて足早に近付けば、相手も気付いた。

「シドゥリさん」

ぱっと嬉しそうな、ほっとしたような顔になってが立ち上がる。
シドゥリはシドゥリで、来てくれて良かったと胸を撫で下ろした。

「すみません、急にお呼び立てして」
「いえ、こちらこそ、なんだかまた我儘を言ってるようで?」
「すぐに社長も来られます」
「…大変ですね、シドゥリさんも」

少し胡乱な目になって呟くにシドゥリは微笑う。

「この後大変なのはさんかと」
「言わないでください。ほんとろくでもない」

はぁと溜め息をつくの格好はいつものカジュアルな物ではなく、華美過ぎもしないがきちんとドレスアップされている。
受付に近い待合いの席に居たので、何事かとちらちら見られる始末だ。
いくら社長夫人とは言え、社員がその顔を知っているわけもない。
自身もそんな意識は薄く、お昼ご飯の配達以外で会社に近付く事もそうない為、不審に思われるのは当たり前だった。
むしろお弁当配達の業者くらいに思われていそうである。

「…押し掛けにでも思われてたら心外なんですけど」
「え?それはないかと」
「いや、でも、視線が痛いんですよ…」

今はシドゥリがそばにいるからか、少し和らいだがやはり通りすがりの社員からは好奇の目が向けられている。
さっさと帰りたい、と言いたげなは少しのざわめきと近付いてくる足音に思わず眉をひそめてそちらに視線を移した。


「……突然の呼び出しどうも」

颯爽と現れたギルガメッシュに思わず皮肉を返せば、眉間に皺を寄せられる。

「仕方あるまい、急に会食が入ったのだ」
「それ私が付き合わされる必要が?」
「貴様はいい加減、我の嫁だと自覚しろ」

正論を返されて、うぐっと詰まったは視線をそらす。
望んでその立場になったわけでもない手前、できる事なら回避したいものなのだ。
けれど、自分がギルガメッシュの横に立つ責務があるのも理解はしている。
まったくもって納得などしていないから、つい文句も零れるのだが。
軽く項垂れるを見ていたギルガメッシュも小さく息を吐く。

「…今日はセイバーもおる」
「! ほんと!?」

渋々と言うように切り出せば、の顔が一気に明るくなった。
その反応に口元を引きつらせ、嬉しそうなとは対照的にギルガメッシュの顔は不機嫌になる。

「会えるかは知らぬがな」
「え、なんで」

きょとんとするにますますむっとして、ギルガメッシュはの腕を掴む。

「行くぞ」
「っちょ、あっ!?」

加減も無しに腕を引かれ、転びそうになるのをギルガメッシュが支えた。

「む、しっかり歩かんか」
「っギルが!無理に引っ張るからでしょ!」
「我自らエスコートしてやっているのだから合わせよ」
「これのどこがエスコートですって!?」

ぎゃあぎゃあと言い合う二人にシドゥリが咳払いを一つする。
ぴたりと口論が止んで、は周囲から集まっている視線に気付いて赤面し、ギルガメッシュは不服なのを隠しもせずに舌打ちした。
それを意に介す事なくにこりとシドゥリは笑みを浮かべる。

「お二人共、いってらっしゃいませ」

送り出す言葉を告げれば、再度を促してギルガメッシュが歩き出す。
今度は腕ではなく背を押すようにしてくるギルガメッシュを見上げたの眉根が寄る。

「ちゃんと歩くから押さないで! …いってきます、シドゥリさん」

背に添えられていた手から逃れて逆にその腕を軽く掴まるように取ったは少し振り返り、気乗りはしていない声でシドゥリに挨拶を返す。
そのの行動に目をしばたたかせたギルガメッシュの機嫌が少し上向いたのを見ていたシドゥリは、笑いそうになるのをぐっと堪えてに手を振った。




「今日は一段と綺麗にされて待っている間は凛としてらしたのに、やっぱりさんはさんなんですよね」

いつもを取り次いでくれる受付嬢がくすくすと微笑う。
一連の出来事を目撃していた社員達の困惑した空気を感じながら、シドゥリもふっと息を吐いた。

さんをお連れになった時はどうなるかと思ったけれど。変に畏ったり、敬ったり、恐れないところがきっと上手くいってる秘訣なんでしょうね」
「社長も楽しそうですものね。印象が変わりました」

本人達に聞かれていれば、どこがだと反論されるであろう事を言って笑い合う。

「さて、明日はどんな機嫌で出社されるかしら」

呟いたシドゥリはそっと肩をすくめた。